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7. 語りかけのタイミング 【去私対座】

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 相談者の話を聞いていると「この人はこんな考え方のクセがあるな」と気づくことがあります。職場でのトラブルが全て上司の無理解や強引さのせいだ、例えばこんな事があったとあげつらう人には「他責的な感情が強いな」と感じます。「みんなもひどい上司だと言っていた」と自分の立場を正当化することもあります。相談者に気付きを与えようとして「上司に時間を取ってもらい話し合ったことは?上司には良い点は全くなかったのですか?」と質問したくなるかもしれません。でも相談者が不満の並べ立てに夢中になっていると感じたら、その質問はしばらく控えた方がよいでしょう。このプロセスは相談者にとってストレス解消になっていることが多いのです。この人の認知はゆがんでいる、直してあげなくてはと感じるかも知れませんが、スポーツカーに乗って気分よく走っているのを急にサイレンを鳴らしてパトカーのように止めようとしたらどうなるでしょう?不愉快になりそれがカウンセラーへの不信感につながるかも知れません。
 場合によってはその日の相談では上司のこき下ろしを好きなだけ話して頂き、次回以降の相談で振り返る方が良いかもしれません。そして相談者の感情が今日は穏やかだなと感じたら、「そう言えば前に上司のパワハラについて話されていましたが、その事を人事部に相談したことがありますか?或いは上司のその上の役職に話したことは?」などと切り出し、自分で状況改善のためのアクションを取ろうとしたかを本人に考えてもらうように促すのが良いかもしれません。或いは転職経験のある人なら「これまでの職場でも似たような経験をしたことがありましたか?」と聞き、イエスにせよノーにせよ、相談者がどのような行動をした時に上司がどのようなリアクションをして、当人はそれをどのように感じたか、二つの経験の違いは何か、それは何故かなど、本人に考えてもらうのも良いでしょう。そうした振り返りの中で、過去に相談者が上司に対して意見を述べたり、提案をしたりしたことがあるとわかった場合にはそうした行動を評価し、同じような行動を取ることを勧めるのが良いでしょう。
 カウンセラーによっては(カウンセラーも感情を持っているので)つい相談者の「ゆがみ」を不快に感じて否定的になり相談者と言い合いになることもあるようです。熱意を持って相談者に対峙するあまり、カウンセラーの社会観や人生観でもって相手を「矯正」しようとしないように注意しましょう。
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6. 無駄な働きかけなどない

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 相談者の就職に対する思いは様々です。なりたい職業が明確な人から何をどうしたらよいのか見当もつかない人まで様々な方が相談にやって来ます。「私の適職を教えて下さい」と言う人がいます。「やりたいことはわからないけどやりたくない仕事ならはっきりしている」と言う人もいます。辛い経験をしたからとかやってはいないが大変そうだから、格好悪いからとかの理由であれはやりたくない、これも、と消去法で話します。コンピュータによる適職診断を受けてみる方法もありますが、診断の結果多様な職種出てしまって却ってわからなくなることもあります。診断結果には映画プロデューサーだとか大学の学長だとか無理目の候補が出てくる場合もあります。誰でもがなりたいものになれるわけではありません。それが現実です。勿論、なりたくないものになる必要はありません。応募しなければいいだけの話ですから。
 資格を持っていても利用したくない人もいます。運転免許証はあるけれど宅急便やタクシーなど仕事で車の運転をしたいとは思わない人も多いはずです。事務職系の求人条件にはしばしば「パソコン操作(エクセル・ワード)」と書かれていますが、エクセルで罫線が引ける程度で良いのか、関数を駆使して統計処理をする必要があるのかまではわかりません。キャリアカウンセラーが相談の中で当人のPC操作の正確なレベルまで把握するのも容易ではありません。エクセルの〇〇機能を知らないならこの職種には就けないだろうなどと推測するのも誤りです。就職してから必要に応じて学ぶことだってできるのですから。

 多くの場合、相談者は就活に自信が持てなくて自分で決められなくなっているだけで、元気を取り戻せば自分で考え、行動するようになります。ではカウンセラーが「元気を出しましょうよ」と言えば元気になるでしょうか?もちろんそんなに簡単な話ではありません。ご本人の事をよく知らないのに「この職歴、素晴らしいじゃないですか」などと褒めるのは却って不信感を招きかねません。また「一人でなんでもやっていた」と言われ高い能力があると判断するのも早計です。他人に手伝ってもらうのが苦手なだけだった可能性もあるからです。
 私が現場で心がけていることの一つは、相談者の仕事経験をできるだけ詳しく伺うことです。製造系ならどんな道具、どんな材料、どんな手順でとか、どんな点に気を使っていたかなどを伺います。仕事の内容を詳細に説明することに馴れている人は少ないので意外と難しく感じると思います。その説明がスムーズにできるようにカウンセラーが要所要所で質問をしてアピールに値するものに気づいて貰います。カウンセラー自身も専門用語をネットで調べたり、関連する写真を探して示したりして、相談者の記憶を呼び起こす手伝いをします。二人で仕事の説明内容を深いものにしてゆきます。この作業の中でご本人が仕事の意味を再発見したり、自信を取り戻してゆきます。
 時には相談者の希望職種からやや離れた求人を提示するのも良いでしょう。相談者が即座に却下したり、躊躇したり、或いは意外な提案に刺激されて新しい選択肢として受け入れたりと様々な反応をするでしょう。そして何故そういった反応をするのかをご本人と話し合うことで新しい展開に繋がるかもしれません。人は刺激を受けると新しい気づきを得ます。その刺激を提示するのはキャリアカウンセラーの大切な役割です。

5. 受け入れる 【去私対座】

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 キャリアカウンセラーに期待されている役割は何でしょうか?第一には相談者を支援して転職や再就職をできるだけ速やかに実現することでしょう。仕事探しは自分だけで行う事もできます。では何故キャリアカウンセラーという職業が成り立つのでしょうか?友人や親やパートナーと相談して進路を決めたっていいはずです。実際、就職希望の高校生は未成年ということもあり親や学校の先生と相談します。でも親も先生も(特に親は)実はそれほど実用的な就活の知識は持っていません。どちらかと言えば大きい会社の方が良いとか有名な会社の方が良いなどと誰でも思いつきそうな事しか言わないでしょう。或いは物分かり良く「自分の好きかようにすればいい」などと言うかもしれません。それでも子供が業界を絞り込んだ辺りで「大丈夫なの、その業界?」などと心配し始めます。親は幾つになっても我が子の行く末が気になって仕方がないのです。極端な話、「そんな会社では結婚相手に恵まれないのでは」「退職金が出ないなら定年後に困窮する」位先の事を心配します。客観的に我が子を見ていられる親はごくわずかでしょう。
 一方キャリアカウンセラーは日々多くの方の就活支援をしていますから豊富な知識と経験を持っています。客観的な意見を言える就活のプロです。そのため時には相談者の希望的推測をデータで冷静に否定することもあります。勿論相談のスタイルはカウンセラーの個性や経験により百人百様です。一般的にはより多く相談を受けてきたカウンセラーの方が実績を積んでいるので自信があり、助言にも説得力があります。

 ここからは自戒を込めて書きますがベテランカウンセラーは自分が支援すればどんな人でもすぐに就職させられると思うかもしれません。けれども中には様々な支援にもかかわらずなかなか採用にいたらない相談者もいます。支援する側もつい焦って「この年齢で正社員狙いは無理」とか「男性は事務職に応募しても採用されない」などつい相談者の気持ちを逆なでするような発言をしてしまいます。(事実だとしても、伝え方、言葉の選び方によって相手が受け入れやすいかどうかが大きく変わってきます)
 そういった相談者が実は家庭問題に悩まされていたり、ご自身の心的な、或いは肉体的な病気を抱えたりしていることもあります。(相談者が全ての個人的問題を正直に開示してくれるとは限りません)或いは希望条件が相当高いのに目標を引き下げるように助言しても聞き入れてもらえない事もあります。有名な会社や官公庁・非営利団体(仕事が楽そうと言う印象を持ちやすい)ばかり応募する方、10年のブランクがあるのにその職種にこだわって応募し続ける方などこだわりがとても強い方はループ状態に陥ってそこから抜け出すことができなくなります。
 プロのキャリアカウンセラーであっても相談者の性格を変えたりや能力をアップすることはできませんから、行き詰まることもあります。でもそれが現実であってドラマや小説のように最後はハッピーエンドに必ずなるとは限りません。そういう時は、ありのままの事実を受け入れるしかありません。科学者が実験に失敗してそれはそれで受け入れるというのと似ています。でもそこからなんらかの教訓を得ることはできるでしょう。

4. じたばたする・ウロウロする 【去私対座】

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 なりたい職業、やりたい仕事に就くために何社にも応募して不採用が続くと気が滅入ってきます。自分としてはその仕事に就く自信があっても、応募先の会社は「必要な人材」と思ってくれない。面接であの受け答えが失敗だったのでは、とか年齢の壁なのでは、などと色々な理由を考える。けれども本当の理由はわからない。もう自分はこの社会に不要なのかも知れない。どんどんネガティブ思考になって「どうせ応募したって・・・」と思ってしまう。
 キャリアカウンセラーは年齢の数だけ、いやその倍くらいは応募しましょう、なんて言うけれど、不採用通知の一通一通がどれだけダメージを与えるのか、わかっていないんじゃないか。これ以上自分が傷つきたくないから行動しない。そうして一週間、一か月、半年と時間が過ぎてゆく。そんな状況の人が相談者としてあなたの前に現れることもあるでしょう。あなたはどんな働きかけをするでしょうか。

 キャリアカウンセリングでは「傾聴」や「共感」が大切と言われますが、それだけでは深く落ち込んでいる相談者への支援としては不十分です。「傾聴」「共感」といういわば受け身のスキルだけではなく、能動的な「働きかけ」が必要になります。あたり前ですが応募しなければ採用はされません。かといって「年齢の数だけ、いやその倍くらいは応募しましょう」なんてどこのカウンセラーでも言いそうな事を話しても相談者の心には響きません。
 そのような状況で私は「とにかく動いてみましょうよ、じたばたすること、ウロウロすることで何かが見えてくるはずです」と助言します。「じたばた」とか「ウロウロ」なんてかなりいい加減な発言のように聞こえるかもしれませんが、意外と効果があります。「とにかく応募しましょう」と言うよりも曖昧な言い方なのですが、その曖昧さの中に相談者の活動の幅を広げてあげたい、自縛の紐をほどいてあげたい、という思いが含まれています。

 「じたばた」は今までしたことのない行動によって、相談者の可能性を広げることです。例えば「応募は書類選考から」、と書かれていても直接会社に電話して是非お会い頂きたい、と伝えてみる。勿論殆ど断られるでしょうが、その後で応募書類(熱い志望動機と共に)を送付したら、選考者の目に留まりやすくなるかもしれません。「あ、あの電話かけてきた人だ」のように。
 「ウロウロ」は今まで訪れたことのない企業説明会や就活セミナー、或いは資格取得の説明会などにも足を運んでみるという意味です。一見回り道に思えるような「じたばた」「ウロウロ」の中から意外な出会いや発見があってそれがブレークスルーになることもあります。そして大事なポイントはキャリアカウンセラーが熱意をもって、かつ優しい気持ちでこの言葉をプレゼントすることだと信じます。

3. 言葉は刃物 【去私対座】

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  「言葉は刃物」と聞いてどのようなイメージが沸くでしょうか?「配慮のない言葉に傷つく」のようなイメージでしょうか。初めから悪意をもっての発言はもちろん許されませんが、なにげなく発した言葉であっても相手が傷つくことがあります。言葉の解釈は受け取った人次第で大きく変わります。届いた言葉がその人の感情を呼び起こします。自分の発言に相手が予想外の反応(喜怒哀楽などの感情)をして驚くこともあります。 「いやいや違うったら。・・・そんな意味で言ったんじゃなくて」 こんなセリフ、日常の中でよく出てくるのではないでしょうか?、或いはスルー(無反応)されてしまう場合も。相手が家族や友人でも発話者の意図どおりに反応してくれるとは限りません。むしろ意図した通り、ズレることなく受け取ってもらえる方が奇跡です。

  人の言葉に傷つく、或いは逆に人を傷つけてしまうと相手への不信や嫌悪が生じます。言葉は一度口から飛び出たら長く相手の心に留まります。どうあっても取り戻すことはできません。政治家の失言が世間の猛反発を呼ぶ事件もよく起きています。それ故「沈黙は金」と言うことわざのように黙っていることが生きる知恵の一つになったのでしょう。けれども「物言わぬは腹ふくるるわざ」(徒然草)のように言いたいことを言わないでいるとストレスがたまります。難しいものですね。
 キャリアカウンセリングでは相手の言葉に即座に反応するのが良いコミュニケーションとは限りません。(かと言って考えすぎて沈黙が長くなると相談者の方が不安になってしまいます。)相談者の悩みがカウンセラーから見て些細なことのように思えたり、堂々巡りをしていたりするためカウンセラーの方が早く相談者を説得しようと焦り、決めつけ的な言葉を行ってしまうと、最悪の場合相談者は傷ついて離れていってしまいます。「言葉は刃物」です。

 自分の言葉が相手にどのような反応を呼び起こすかを瞬時に計算して最適の言葉を選べるのがベストなのでしょうが、それができる人はプロ中のプロでしょう。私が心がけているのは、幾つかの言葉や言い方を候補として考え、頭の中でシミュレーションすることです。相談を続けている間にシミュレーションを繰り返しますが、ベストと思える言葉が確定するまでは、とりあえず会話を繋げていき(なるべく相手に話してもらうのが良いでしょう)結論めいた表現はしないようにしています。場合によってはその日に用意していた言葉を出さずに次回以降の相談まで取っておくこともあります。或いは相談の後でよい言葉や表現を思いつくこともあります。それらの言葉はメモしておいて忘れないようにも努めています。

 以上の説明とは別に「言葉は刃物」のもう一つの意味があります。調理で言えばプロの板前さんが鮮やかに魚をさばく時の包丁です。包丁は一口サイズに切り分けます。お客さんが食べやすい(わかりやすい)言葉になるよう適切な語彙を選ぶのは包丁さばきと似ています。或いは医師が腫瘍を切除する時のメスです。患者さんを傷つけないように細心の注意を払いながらダメージ部分だけを取り去ります。相談者の悩みを心の中からきれいに切り取ってしまうような言葉を選ぶのもカウンセリングのスキルです。
 例えば派遣やパートばかりで働いてきた方は自分が正社員よりも劣っているように思いがちです。けれどもじっくりお話を伺ってみると、契約期間や契約先の事業の都合で解雇されてしまったけれどご本人にはなんの落ち度もないことがわかったとします。そう言う場合には「でも、ご自分から辞めた仕事は一つもなかった訳ですよね。つまり素晴らしい忍耐力を持っているといえるのでは?」などと話しかけます。

 キャリアカウンセラーは医師ではないので薬も手術も使えません。使えるのは言葉だけです。自分の語彙を増やし、どんな場合にどんな言葉を使うのが適切なのか、言葉の効力を把握しておくことが大切です。
プロフィール
ようこそいらっしゃいました。 キャリアカウンセラーのマニーです。 このサイトでは主に「働くこと」について色々な観点から考えたいと思います。ご意見お待ちしています。

マニー

Author:マニー
今西穂高
埼玉県在住

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