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「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第12週「おら、東京さ行くだ!」】 【その3】

先週放映分の続きを投稿します。夏と春子の「名言」について書きました。
いつもお読み頂きありがとうございます。

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【名言】
  春子が夏との25年前の二人の会話を思い出して夏に詰問するシーンがあります。アキの東京行きを認めるかどうかで母親として悩む春子は、25年前にどうしても東京に行きたいと夏に告げた日の夜、家に市長と海女達がやってきて春子に観光海女になって町を盛り上げて欲しいと頼みに来ました。その時の夏のとった態度が春子にはずっとわだかまりとなっていました。それについて夏は重い口を開きます。

 「あの晩、おめは本気で訴えかげで来た。だがらオラも本気で応えるべきだった。大事な娘を。欲の皮の突っ張った大人の犠牲にしたくねえ!って市長さんや組合長さ啖呵切るべきだった。今なら言えるが、あの頃は、体面を気にして(夏は当時から海女クラブの会長でした)言えねがった。その事をずっと悔やんでだがら・・・おめぇの顔見るのも辛かった。・・・・すまねがったな、春子」

 思いがけない謝罪の言葉を夏から聞く春子。この後春子はアキの東京行きを認めました。物語の展開上とても重要なシーンですが、それ以上に肉親間の愛憎とその和解がこの言葉には詰まっていて、何度見ても心が揺さぶられます。


【名言】
 東京に出発するアキを北鉄のホームで見送る春子が、動き出す列車の中のアキと会話します。

アキ「ねえママ、私変わった?一年前と、ずいぶん変わった?」
春子「変わってないよアキ!・・・アンタじゃなくてみんなが変わった!自信もっていいよ、それはすごい事だから!」

 春子の複雑な性格が出ている言葉です。夏に対してはアキが北三陸に住むようになって大きく変わったと認めているのですが、アキに対しては「変わっていない」と言います。ただそれはその後の言葉を言いたいがために出たもので、「みんなが変わった!自信もっていいよ、それはすごい事だから!」と言う心からの応援のメッセージです。娘の事を「地味で暗くて」、と断定していた春子が、アキによって海女クラブや北鉄の大人たちが元気になった、それはすごい事なのだ、と褒めています。

「社会的説得」

 旅立ちの日に春子がアキに言った言葉は、これから社会に出る我が子への素晴らしいメッセージです。この言葉によってアキは自己効力が強まるに違いありません。ドラマででもなければ言えないようなセリフではあるけれど、「自信もっていいよ」の言葉はバンデューラの自己効力を強める要素の3つ目である「社会的説得」です。

【余談】
 アキが春子の歌と映画の中の挿入歌の両方を聞いた後で感じたことを春子に言います。
「でも、オラぁママの歌の方が好ぎだ。先に聴いだがらかもしんねぇが、ママの歌の方が本物だって、今でも思ってるよ」

 同じ曲を異なる演奏家で聞いた場合、初めに聴いた曲の方が素敵でその後の演奏は何か違和感がある、好きになれない、という経験をすることがあります。これは初めて聴く演奏が聴く人に強いインパクトを残すことが原因と思われます。私自身もクラッシク音楽を異なる指揮者、異なる演奏家で聞き比べをすることがありますが、殆どの場合は最初に買ったCDがベストでそれ以降に聴いたものは好みでない、と感じてしまいます。いわゆる「刷り込み」なのだと思います。
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「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第12週「おら、東京さ行くだ!」】 【その2】


今週の考察の続きをアップします。
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【あらまし2】
 自宅に戻り東京の芸能プロダクションに入ることについて春子とアキが二人だけで話をします。春子は少し前に自分の昔話を、若い頃アイドルにあこがれて家出したこと、あの頃の芸能界のことなどを夢中になって話したことがアキを刺激してしまったと考えます。

春子「アイドルはダメ、許さない」
アキ「なんで?」
春子「不幸になるから」
アキ「やってみなきゃわがんねべ」
春子「分かる」
アキ「それでもいい。やるだけやってみてえんだ」
アキ「聞いでけろママ、おらがアイドルになりでえって最初に思ったのは・・・ママの歌聞いた時なんだよ」


【あらまし2の考察】

「キャリア・アンカー(チャレンジ)」

 ユイの「やってみもしないで諦めるのがイヤなんです」とアキの「やってみなきゃわがんねべ」は同じ思いを表しています。海女さんになりたいとアキが言った時に辛い仕事だよと言われ、「やってみなきゃわからない」と答えたシーンもありました。

 「アイドル」の仕事を需要と供給の関係で考えれば、春子が言うようにアイドルとして成功する少女はほんの一握りです。それ以外の大勢は「利用されて消費されて心が折れる」、と春子は諭します。厳しい競争に晒され、芸能プロダクションの思い一つで運命が変わってしまう不安定な職業です。春子がかつて失意を味わったように成功率が非常に低い職業です。

 職業を選択する時に、自分が今できることを基準にしてその範囲内で選ぶのは合理的です。転職をする多くの人は過去の経験をもとに実現性が高いものの中から次の仕事を探します。自分の憧れだけをもとに職業を選ぶと多くの場合は大きな困難が待っています。キャリアカウンセラーも夢を追っている相談者には「その仕事に就くにはこういう資格が必要です」とか「少なくとも3年以上の経験がないと書類選考に通らない」など情報提供します。どんなに思いが強い人でも就活で失敗が続くと自信をなくします。折れた心のままでは実力的には通るはずの面接まで通らなくなってしまうので、可能性の低い応募には気を使います。

 春子は自分の経験からアイドルを目指しても失敗するに決まっている、と信じています。これは自分の経験をもとに物事を一般化するという、誰にでもある心の動きです。しかし「やってみなきゃわがんねぇべ」というアキの反論も否定できません。何故でしょうか。それは「社会で起きる出来事はどのようなものも可能性はゼロではない」からです。周りの人ではなく、本人が「やってみなければわからない」と考えるなら誰も止めることはできません。ただしその時注目するべきは「やってみなければわからない」という言葉の迫力や語気の強さです。

 きっぱりと自分の口で「やってみなければわからない」と言える人は、信念の強い人です。その言葉を発するまでにやるべきことをやっていて、心も技も体も準備ができている状態の人です。一方つぶやくように「やってみなければわからない」としか言えない人には、自信のなさが表れています。更に「あたって砕けろ!」とか「出たとこ勝負だ!」と言う人も語気は強いのですが、それはから元気であって自信のなさの裏返しです。アキはウニを獲るためにひと夏かけてずっと練習をして、ついに成功した体験を持っていますから大変でも努力すればできるようになる、という信念を持っています。
 この「やってみなきゃわからない」は、先に見たシャインの8つのキャリア・アンカーの一つ、「チャレンジ」に繋がります。アキはチャレンジ精神を自分のキャリア・アンカーとして持ち始めています。北三陸に来て一年経ち、アキは精神的に素晴らしい成長を遂げました。

「モデリング」

 アキの「聞いでけろママ、おらがアイドルになりでえって最初に思ったのは・・・ママの歌聞いた時なんだよ」は、これまでに何度も触れた「モデリング」を意味します。振り返るとアキにとっては夏が海女としての、春子がアイドルとしてのキャリアモデルとなっています。更にビデオで繰り返し見た「潮騒のメモリー」のヒロイン鈴鹿ひろみもキャリアモデルとなっています。

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第12週「おら、東京さ行くだ!」】 【その1】

先回に続き、この週も非常に多くのキャリア&ライフ上のテーマが含まれており、かなりの長文になってしまいました。
写真は友人の高橋千香さんからいただいたものです。
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【あらまし1】

 ユイの強い思いと行動力に合わせるようにアキも家出を決心します。夜行バスで東京へ行くつもりでしたが、失敗して再び大人たちの気づくところとなります。ユイは観光協会で、アキは海女クラブで、それぞれ大人たちに囲まれて町おこしや鉄道経営の問題という大人の事情でのプレッシャーをかけられます。しかし二人とも負けてはいません。ユイは本音で喋ります。
「小さいころからの夢なんです。それをやってみもしないで諦めるのがイヤなんです」
さらに、大人たちに逆提案をします。
「確かにウチ等がいなくなると一時的に観光客は減るでしょう。でもPRなら、東京へ行っても出来ますよね。むしろ北三陸の知名度を上げるためには、ここにいて観光客を待っているより、東京へ行って呼びかけた方が効果的なんじゃないかって」
北三陸にいるよりも東京の方が地元の宣伝になる、アキと二人で言葉も訛って「じぇじぇ」を流行らせて流行語大賞を取る、と言います。余談ですが、本当に「じぇじぇじぇ」は大賞取ってしまいました。

 海女クラブでアキは、ユイちゃんと一緒にアイドルになるのは今しかできない、と言い、アイドルになれなかったら戻って潔く海女になる、と約束します。その言葉で海女クラブは立場を180度転換し、アキを東京に行かせる応援団となります。そして全員で観光協会に乗り込みます。圧倒される北鉄と観光協会に対し夏が一言発します。
「今まで甘い汁吸ってきたんだから二人に恩返ししろ」


【あらまし1の考察】

 「4Sトランジション・モデル」

【名言】

 「でも、どれも本気なんだ。こごさ残って、就職して夏の間だけ海女やって、それはそれで間違いなぐ楽しいべ。んでも・・・海女は好きだけど、今じゃなくても出来るべ。だげんど、ユイちゃんと東京さ行って、アイドルさ・・・なれるがどうが分がんねえけど、それは、今しか出来ねえべ」

 この言葉に共感した海女クラブはアキの東京行きを応援します。以前も触れましたが、周りからの応援はキャリアの危機を克服するための重要な要素です。米国の教育学の研究者、ナンシー・シュロスバーグは、キャリアの転機を乗り越えるために有用な4つの要素があると提唱しています。それは、「状況」、「自己」、「支援」、「戦略」です。英語ではそれぞれがSituation, Self, Support, Strategyと呼ばれ、4つとも頭文字が ”S”なので「シュロスバーグの4Sモデル」と呼ばれています。その主旨は予期せぬこと、逆に期待していることなどが起きてキャリアの転機が訪れた時に、今どんな状況なのか、自分自身はどうであるのか、どんな援助を周りから受けられるのか、そしてどんな方法で乗り越えるのか、の4つの視点で考えるのが良い、と言うことです。
 アキは海女クラブから「支援」を貰いました。海女達は漁協と観光協会、北三陸鉄道を相手に回してアキを応援しました。応援と言うよりも反対者を説得する役でしたのでシュロスバーグの「支援」からは少し逸脱してはいますが。更に言えばアキとユイのステージを見るために集まったファンの声援も「支援」です。自分たちの歌や踊りにファンが喜んでくれる、それがユイとアキのアイドルへの志望動機でありトランジションにおける「支援」でした。

 「海女になりたい」と言ったかと思うと「潜水士になる」と言い、更に「アイドルになる」とアキはやりたいことを次々に変えます。けれども海女とアイドルには共通点があることをアキは見つけています。サービス業です。ウニを割って差し出した時、又はファンの前で踊った時、相手に喜んでもらえてどちらも嬉しかった。
 何が自分にとって楽しいのかを知っている人は、そうでない人と比べて忍耐力や向上心があります。アキのように異なった職種へ転職する時に自分のキャリア&ライフにとって何が大切かをわかっていると、表面的な違いに惑わされることはありません。

「積極的不確実性」

 論理的に考えれば海女の仕事とアイドルの仕事は何のつながりもありません。現実に海女を辞めてアイドルになりたいという相談を受けた時には多くのカウンセラーが口には出さずとも心では「無理!」と思うでしょう。そしてアイドル業界の競争の激しさや仕事の辛さ、人気の短さなどを述べて不安定な仕事ですよ、と親切心で忠告するでしょう。

 ここでまたキャリアカウンセリングの理論に触れます。米国のカウンセリングの研究者ジェラットは現実的な助言が良い助言だと考えるカウンセラー達に警告しています。ジェラットは相談者の熱い思いを無視してはいけないと言っています。そして相談者自身の「直観」も重視しよう、と唱えました。ジェラットはその考え方を「積極的不確実性」という言葉で表現しています。このカウンセリング理論は「意思決定論」とも呼ばれています。

 人がキャリアの選択をする時にどのような方法で意思決定を行うかについてジェラットは研究し、理論化しました。時代的には1990年代前後に出てきたかなり新しい考え方です。現代のように情報の収集や分析が効率よく、もれなくできる時代では、過去の統計的情報に照らせば、合理的な意思決定かどうかは誰でも判断しやすくなっています。データ分析から見つけた法則は正しく、それ以外の選択は非現実的でリスクが高い、と我々は考えるようになりました。けれども人間の思考はかならずしも常に論理的というわけではなく、本人独自の直観によって意思決定する方が本来のその人らしいキャリア&ライフを体現できる、というのがジェラットの主張です。

 海女としての仕事とアイドルとしての仕事の共通点を直観したアキは春子に言います。「んだ!サービス業だ!海女も、アイドルも、一生懸命サービスして、お客さんに喜んでもらうのは一緒だって、オラぁ気づいだんだ!」
これがジェラットの言う「その人らしい意思決定」です。ただし、実はアキの思いは去年夏が言ったこの言葉があったからこその気づきです。

「ウニは銭、海女はサービス業、わかったな」
観光海女として長年働いていた夏の言葉には重みがあります。


「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第11週:「おら、アイドルになりてぇ!」】 【その4】

第11週の考察の最後の投稿です。いつもお付き合いいただきありがとうございます。
写真は友人の高橋千香さんからいただいたものです。
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【名言】
 「んだ!サービス業だ!海女も、アイドルも、一生懸命サービスして、お客さんに喜んでもらうのは一緒だって、オラぁ気づいたんだ」

 海女とアイドルという二つのかけ離れた職業の中にサービス業という共通点を見出したアキには強い直観力があります。以前潜水士になる、と言った時も「潜る」という共通点でキャリアをひろげました。
キャリアカウンセリングで転職の相談を受ける場合、カウンセラーは4つの可能性を考えます。
一つ目;現在と同じ業界の同じ職種での転職
二つ目:同じ業界の違う職種への転職
三つ目:異なる業界の同じ職種への転職
四つ目:異なる業界の違う職種への転職

 一つ目が一番簡単で四つ目が最も難しいのは明らかです。海女からアイドルの転職は一番困難な四つ目に相当します。けれどもアキの発想はどちらも同じサービス業、というものでした。全く異なる職業に見えてもその本質が同じであれば、その人のそれまでの経験を活かすことができます。もちろんドラマとは違い現実にはそう簡単にはいかないものですが。
他者との人間関係を作ってゆくときも、自分と異なる点ではなく、同じ点を探そうとすることが重要です。人は「自分と同じ」と考えると安心し親しみを持てるからです。

【名言】
 
「・・・オラもいづまでも逃げ回ってらんねぇ。いづかは、ママみでぇに、向き合わねえど。地元で、ダサかった頃の自分ど。・・・東京がオラにとっては地元だがらよ。チヤホヤされで、ちょっと調子に乗った時に『地元じゃダメだったくせに』って声が聞こえるんだ・・・うるせえ、おら田舎さ逃げで来たわげじゃねえぞ、地元でだってやれるんだって・・・うん、克服しねぇど」

 ユイの東京行きを応援したい気持ちから、アキは一緒に東京へ行くことを考えます。もともと住んでいたアキにとって暗いイメージしかない東京に行くのは気が進まないのですが、春子が北三陸に戻って地元でやり直そうとしている姿を見て、自分も逃げ回る事をやめようと決心します。ここでも春子はアキのキャリアモデルになっています。
 苦手なものをずっと遠ざけたままの生き方も勿論ありですが、アキはそれを「自分の問題と向き合わない姿勢」と考え、後ろめたく思っています。自分の課題を克服するのはストレスが多くて辛い事ですが、いつかは対決しなくてはならない重要な課題であれば、エネルギーのあるうちに始めるべきでしょう。

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第11週:「おら、アイドルになりてぇ!」】 【その3】

今週分の続き「その3」を投稿します。いつもお読み頂きありがとうございます。

写真は久慈市観光物産協会からお借りしました。
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【あらまし3】

 海女カフェでの騒動の後、自宅に帰ってからアキは言います。

「おらぁアイドルになりでえ!歌って踊って潜ってウニ獲って上がって食わせる、そんなアイドルになりでえ」
 その発言でまた春子にひっぱたかれてしまいます。
イベントに先立ってアキは映画「潮騒のメモリー」のビデオを一人で見ていました。アキはこのビデオを何度も繰り返して見ては感動して泣き、セリフまで覚えて鈴鹿ひろみのような女優になりたいと思うようになります。映画を見たことによりこれまで興味のなかったアイドルへの関心が急に高まります。
 東京ではネットにアップされた二人の動画を見た大物プロデューサー太巻が、夏休みに東京に来るようにとアキとユイに電話をしてきます。

【あらまし3の考察】

 「モデリング」

 アキが映画のビデオを何度も繰り返し見るシーンは、「おらのママに歴史あり」で考察した「モデリング」の②「保持過程」に当たります。ビデオを何度も見る、或は写真集や自伝を読むなどあこがれの人に関する情報を可能な限り集め、それを何度も繰り返し見て記憶に刻む、こういった行為はキャリアモデルに対する記憶を強化します。若い海女が主役のこの映画はアキ自身が海女なので自己同一化しやすく、モデリングとして強力な影響を与えました。

 若い人は芸能人やスポーツ選手を自分のキャリアモデルとしてしばしば「追っかけ」を行います。その記憶強化の中で自分自身とキャリアモデルとが一体となっていきます。キャリアモデルに自己を投影し、頭の中でシミュレーションします。例えばあこがれの人との会話シーンを想像する、或はドラマによく似た状況を想像し同じように振る舞ってみるなど、頭の中で練習することが「保持過程」です。

 次が③「運動再生過程」です。ここで空想の世界から現実の世界へ移行します。若い頃の春子の例で言えば髪形を聖子ちゃんカットにする段階です。キャリアモデルが有名人ならその人の真似を人前でやってみたくなります。種市先輩と二人でたき火をした夜、アキは映画「潮騒のメモリー」のシーンの真似をして「はいっ、天野、その火を跳び越えますっ!」とヒロインになりきっていたのが「運動再生過程」です。

 ④「動機づけ過程」は周りの人(他者)による刺激(褒め言葉)や、自分が上達したと感じることでモデリング行動が強化されることです。他者によるポジティブな評価は「外的強化」と言い、自分自身が上達度に満足することを「自己強化」と言います。周りの人が気づいて、「上手い!」とほめることもあるでしょう。また親にとって好ましい行動であれば、積極的に子供を応援し、専門的なレッスンを受けさせたり高い教材や良い道具を与えたりします。
 アキのアイドルへの動機づけは次の言葉で表現されています。海女カフェでの出番直前にアキがユイに言いました。
「本番前のこの緊張感と、ワクワクする感じ?オラ、この時間、好きだ。なんか、癖になりそうだ」
これも「動機づけ過程」です。楽屋裏での緊張感をアキはポジティブに受け止めています。いわゆる「癖になりそうな快感」です。

 一方で春子は全く別の観点を持っています。パフォーマンスの直後、舞台に上がってアキをひっぱたいた春子はファンの大ブーイングを受けてもめげません。「嫌なんです、大事な娘が、こういう男性の、ギラギラした、好奇の目に晒されるの」
アキが言った本番前の緊張感が好きだ、と春子の男性のギラギラした目が娘に注がれるのが嫌いだ、は真っ向からぶつかる主観です。アキの快感と春子の不快感のどちらも感情の好悪です。ただアキは現在を基軸に考え、春子は将来を基軸に考えています。春子はアキのことを大事と思えばこそ、自分の経験から不愉快な未来を先読みしました。

 「おらぁアイドルになりでえ!歌って踊って潜ってウニ獲って上がって食わせる、そんなアイドルになりでえ」

 この言葉はアキ自身の仕事へのイメージが結晶化されたものです。他人には夢のようで馬鹿馬鹿しく聞こえても自分の将来のキャリアイメージを持つことは重要です。モデリングの段階ではそんな仕事が自分にできるのかとか仕事はあるのかよりも心からそうなりたい、と願うことが大事です。

 アイドルとして働くことへの動機がアキの言葉に見えています。

「あん時の、お客さんの笑顔や声援が忘れられねぇくて、ありがとう、ありがとうって。・・・来た時より、確実に元気になって帰って行くお客さんの顔が忘れられねくて」
しかもその思いは根強いことが次の言葉で裏付けられます。

「海女やってる時がら感じてた事だ。潜って、ウニ獲って、ウニ剥いで、お客さんに喜んでもらって」

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第11週:「おら、アイドルになりてぇ!」】 【その2】

いつもお読み頂きありがとうございます。 今週分の続き「その2」を投稿します。
写真は再び三陸鉄道のWEBサイトからお借りしました。
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【あらまし2】

 ユイをなんとか元気づけようと考え、アキは海女カフェの夏のイベントとして、ユイと一緒にもう一度歌と踊りのパフォーマンスをしようと提案します。アキの説得でユイもやる気が出てきて「潮騒のメモリーズ」が復活します。春子に内緒で行ったこのイベントは大人気で全国から多くの地元アイドルファンが押し寄せました。その結果アキは、この手のパフォーマンスはお座敷列車での一回きり、という春子との約束を破ってしまいます。これを知った春子は激怒して舞台に上がりアキをひっぱたきます。


【あらまし2の考察】

「リスクを取る覚悟」

 リスクを敢えて冒して挑戦することは、キャリア発達の観点からは望ましいことです。以前述べたクランボルツの「計画された偶発性」を支える5つのスキルの一つ、「リスクを取る覚悟」が求められます。例えばユイの場合、東京には行かず地元で人気を維持しつづけるというのも一つの選択です。ただ最終的にどう行動するかを決めるのはユイ本人です。自分の将来がどうなるかなど誰も予測できません。予測不能という不安の中で誰もが決断を行っていくのです。

 決断をする時には思い切って決める、という姿勢が重要です。決める時にはリスクを取る覚悟もしなくてはなりません。あまりうまくいく気がしないけれどこの道を選ぼう、などと弱気で決断した場合その弱気が行動の足を引っ張ります。そんな気持ちのまま面接やオーディションに行っても相手に良い印象を与えるのは難しいでしょう。学生の就活では効率を考え短期間に何社も面接を受けようとします。しかし初めの会社での面接失敗が影響して萎縮してしまい立て続けに不採用、ということもあります。スポーツと同様、挑戦者にとっては勝つためのメンタルトレーニングは非常に重要です。一度負けても引きずらないような心の鍛錬が必要です。そのためには本番よりも厳しい訓練を行い、言動に自信を持てるようにすることが大事です。キャリアカウンセラーが行う模擬面接も相談者に自信を持ってもらうのが目的です。

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第11週:「おら、アイドルになりてぇ!」】 【その1】

今回もたくさん考察しましたので、複数に分けて投稿します。写真は北三陸鉄道のWEBサイトからお借りしました。
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【あらまし1】

 ユイの人気を重要な観光資源と考える北鉄の駅長、大吉はユイと水口が車で東京へ向かうと知り、居場所を突きとめます。大吉をはじめとする大人たちは水口を非難し、ユイちゃんは廃線寸前の北鉄の救世主だ、そこら辺の女子高生とは違うんだ、とまくしたてます。それを聞いてユイは大人たちに大きな疑問を投げかけます。
「そんなに町おこしが大事なんですか?」
 この言葉は大人たちの胸に突き刺さります。自分たちは少女の夢を食いつぶそうとしているのかも、と観光協会の菅原が言い、春子は昔の自分を見ているようだ、と言います。家出に失敗したユイはひどく落ち込んで家にこもりっきりになります。

【あらまし1の考察】

「目標設定」

 ユイの言葉、「そんなに町おこしが大事なんですか?」は自分のキャリアの目標を持っているユイと北三陸の大人たちの価値観の違いを象徴的に表現しています。大吉は水口に怒鳴ります。 
「いいかミズタク、よく聞げ、ユイちゃんはこの北三陸の救世主なんだ。(中略)廃線寸前のローカル線を、普通の女子高生が復活させたんだ。そごらの、スカートピラピラさせて歌ってる女子供と一緒にすんでねぇ!」
これを聞いたユイが先の言葉を発します。

「私の、東京行きたいって気持ちとか、アイドルになりたいっていう子供の頃からの夢とかは、聞いてもらえないんですか?」
そして続けて
「これ以上犠牲になるのはイヤ、こんな所で一生を終えるなんて、ありえない!」
と叫びます。

 ユイは自分への注目度が上がることを期待してミス北鉄となりました。その結果として町は活性化しましたが、その成功は北三陸市にとっての最終目標ではあってもユイにとっては一つのステップに過ぎません。
 相談者とのカウンセリングを進めていく中で、キャリアカウンセラーはまず相手の課題を理解します。次に行うのが目標の設定です。相談者がいつまでにどのような状況を実現したいのかを明確にします。カウセリングプロセスの重要な一段階です。
 ユイの目標は「18歳になる前に東京でアイドルになる」です。「ミス北鉄」は自分の知名度を上げる手段でした。大人たちは地域レベルの最大利益の追求が善だとする価値観を持っています。もしユイのキャリア&ライフ上の目標が「生まれ住んでいる町をより良いものにしてゆく」であれば何の問題も起きませんが、両者は価値観も目標も異なります。一時的に利害が一致したのでユイは協力しただけです。「こんな所で一生を終える」の言葉にユイの気持ちが凝縮されています。

「トランジション」(過渡期)

 このようなジレンマは個人のキャリア発達の中でも生じます。これをキャリア発達理論の中では「トランジション」(過渡期)と呼んでいます。東京で行われるオーディションに合格すればユイの人生は大きく変わります。合格しなければ「自分の人生は終わった」位に考えて落ち込むでしょう。その人にとっての大きな転機、それがトランジションです。
 キャリア理論の中では人は成長に従い、何度かのトランジションを経験すると言われています。その周期は社会心理学者のレビンソンによれば7、8年に一度は訪れると言われています。トランジションの時期は「成人への過渡期」、「30歳前後の過渡期」、「中年への過渡期」、「50歳の過渡期」、「老年への過渡期」と年齢に従ってやってくると彼は唱えました。
 同じ米国の心理学者ブリッジスはトランジションは年齢によらず訪れるとし、3つの段階があると述べています。それは「第一段階:何かが終わる時」、「第二段階:ニュートラル・ゾーン」、「第三段階:何かが始まる時」です。第一段階が「終り」だという発想は仏教の輪廻思想を思わせます。
 ユイと北鉄の関係も「何かが終わる時」を迎えようとしています。ブリッジスによれば、この第一段階は、当初に合意されていた目標や計画に意欲がなくなり、何かがうまく回らなくなる段階で、当事者は混乱や虚しさに襲われます。ユイが家出の失敗の後引きこもりになったのは「何かが終わる時」だからです。

【名言】
  
「(琥珀を手にして)こんなもの、元はただの樹液だべ。磨いで磨いで、やっと価値がでる。おめえの仕事もそんだべ?どんないい原石でもよ、磨かなかったら宝石にはなんね、違うか?」

 琥珀掘りの勉さんの弟子ということで潜入していたもののスカウトマンという正体がばれて東京へ帰る水口に、勉さんが言った言葉です。スカウトマンの仕事は人材の発掘です。更にスカウト後にはその人材が力を発揮できるように育成します。才能を磨く、という言葉もあるように素質だけで勝負するのでなく、能力を発揮できるよう支援することも大事です。

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第10週:「おら、スカウトされる?」】 【その2】



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第10週の考察の続きです。

「信念」

 ユイは町の人が気づかないうちに水口がスカウトマンだと見破り、アイドルになりたいと自分から売り込みをします。水口は自分はスカウトマンではないと初めは否定しますが、ユイの真剣な表情を見てこう言います。

「それは君次第でしょ。君の覚悟っていうか、本気が見たいって、もし俺が業界の人間で、・・・違うけどね、そういう業界のそういう立場の人間だったら、そう思うけどね。」

 水口は「覚悟」「本気」を見たいと言います。水口はスカウトマンなのでアイドルを目指す少女達の面接の経験があるはずです。そして続けてこう言います。

【名言】

 「そこらにいる、普通にそこそこ可愛くて、アイドルになりたーいなんて夢見てる、ちょっとイタイ女の子と、何が違うのか、知りたいけどね」

 水口の言葉にはユイの本気度を探る気持ちが見えます。本気かどうか、覚悟があるか、ここでは以前触れたクランボルツの「信念」、キャリア意思決定に影響を及ぼす「信念」が就職希望者にあるかどうかが問われています。

 就活での面接の場でもこれに近い発言が面接官から出ることがあります。「当社への志望動機は何ですか?」「当社のどういった点に興味を持ちましたか?」などの質問は応募者のやる気を確認する目的があります。大手の会社には「名前を聞いたことがある」と言うだけの理由で何千人の応募者がエントリーしてきます。学校を新規に卒業する「新卒」の採用で最も重視するのは仕事をバリバリやってくれる人かどうか、つまり積極性です。どの企業も一つの業界の中で他社と競って生き残ろうと必死です。だから新卒を採用して会社に新しいエネルギーを注入しようとするのです。エネルギッシュな学生ほど内定を貰いやすいのは競争の原理からは当然なのです。

 水口はユイの気持ちを十分理解していました。ユイが地元テレビのレポーターになることを勧めたのも水口です。そしてユイはその助言を受け入れて「スモールステップ」を踏み出します。水口は業界人ですからどうしたら目的に近づけるのかを熟知しています。その点で水口はユイに対するキャリアコンサルタントの役割を果たしています。

【名言】

 アキのアイディアで海女カフェが作られ、入門希望の新人海女が10人入って袖ヶ浦は活気を帯びてきます。いよいよオープンする海女カフェに来て春子がアキに言います。

「ママ、この町嫌いだったし。・・・・(中略)・・・ていうか、好きとか嫌いとか言うのってよそから来た人間だよね。嫌いならアキみたいに、自分の好きなように変えちゃえばいいんだよ。周りを。」

 春子は、嫌な場所でも自分から行動を起こし、周りを変えていけば良い環境になる、と言っています。新聞の人生相談や自己啓発書などでは、他人を変える事は出来ないが自分を変える事はできる、としばしば書かれていますが、春子の言葉はそれとは矛盾するようにも見えます。けれども実はどちらも正しい考えです。何故なら人は相互に影響を受けるからです。強力なリーダーがいてメンバーにどんどん指示を出し、メンバーは盲目的なフォロワーになる、という組織は長続きしません。現実にはリーダーが将来をすべてお見通しということはありえません。リーダーが見えない部分はメンバーからの意見をよく聞き、必要ならば方向転換も行うのが長続きできる組織です。自分も変わり相手も変わることでより良い最適化を進めることができます。環境への適応ができた生物が生存し続けられる、進化論と同じ考え方です。

 アキは東京では地味で華もない子だったのですが、北三陸に来てからは大きく変わりました。よく笑い、皆に好かれ、新しいことにどんどん挑戦していきます。母親としての春子はアキの変化を嬉しく思ったからこそこの言葉が出てきたのです。北三陸に新しい観光名所を作ろうと皆が動き始めたのはアキのポジティブな姿勢が周りに刺激を与え、銀行からの借り入れや、海女カフェの建設を決断させたわけです。ポジティブな言動をする人の周りには自然と人が集まってきて何か新しいことをみんなでやろう、という雰囲気が生まれます。このようなタイプの人は今は若くて新人であっても、将来はその組織を活性化するリーダーになる素質を持っています。

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第10週:「おら、スカウトされる?」】 【その1】


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この週は非常に多くのキャリア&ライフ上のテーマが含まれています。そのため、かなりの長文になってしまいました。二つに分けて投稿します。

【あらまし1】

 アキは海女クラブの先輩たちにこの夏は袖ヶ浜に海女カフェを開こう、と提案しその実現にはりきります。ヒロシが撮影した宣伝用の動画でも「海女さん募集しています」、とPRしました。その効果で10人の若い女性が採用されます。ユイの方は地元の放送局が注目し、テレビ番組のレポーターとしてレギュラー出演するようになります。アキもユイも地元アイドルとしてますます人気者になります。

 その夏、海開きと同時に海女カフェはオープンし、アキは観光海女としてウニを獲り、新人海女の育成係も任されて大忙しとなります。そんな頃ユイはアキを呼び出し、自分はどうしてもこの夏東京に行ってアイドルのオーディションを受けたいと打ち明けます。そしてアキに言います。

「こっちで出来ることは一通りやったし」
 スカウト目的で北三陸に潜入している水口からユイは親の了解なしでの東京行きは難しい、高校を卒業してからでもオーディションはある、と言われています。18歳になる前にデビューしなくては、と焦るユイ。東京に行きたいと両親に告げますが反対され、怒りのあまり母親をなじります。

「こんな田舎で、こんな山奥で、ダサいポロシャツに残念なエプロンして」、
お母さんみたいになりたくない、と言い放ちます。父親から
「東京へ行こうが芸能人になろうが、好きにするがいい!」
と叱られ、家出同然に北三陸を離れようとします。
かつて春子が東京へ行ってしまって町が大騒ぎになったあの事件が、25年経って足立家で再現されようとしています。

【あらまし1の考察】

 アキはオープンした海女カフェで新人育成を担当します。人は教わるだけでなく教えることによっても成長するのですが、それはひとまず置いておき再びユイについて考察します。
 ユイがアキに言った言葉、「こっちで出来ることは一通りやったし」からはユイの強い信念が伺えます。ユイの自己効力感は以前述べたスモールステップ法によって養われています。周りの大人たちがちょっと位反対しようとユイの自信は揺るぎません。ドラマ中ではプライドの高い少女を演じた橋本愛さんは少し損な役回りだったと思いますが、自分で目標に向かってなすべきことを一つ一つクリアしてゆく点では「あまちゃん」の登場人物の中で最も計画的にキャリア発達を進めようとする人物設定です。

 ユイのモデリングについて考えてみましょう。アキにとっては春子や夏がモデリングの対象だったのと同様にユイも自分の母親がテレビ局のアナウンサーだったことを意識していました。ただ母親に対するユイの思いは複雑です。なぜ北三陸のような田舎で専業主婦になってしまったのか、アナウンサーとして華々しく活躍するチャンスがあったはずなのに結婚によってそれを失った、と思っています。ユイは母親を自分のアンチモデルと見なして主婦の仕事には何も楽しいことがない、田舎の生活はつまらないと考えています。その思いがつい口論の中で出てしまいます。

 「こんな田舎で、こんな山奥で、ダサいポロシャツに残念なエプロンしてシチュー作って、そんな風になりたくないの」
自分のキャリアを選ぶ時に素晴らしい仕事をしている人をモデルとするのは自然な行動ですが、ユイの場合は東京へのあこがれとアイドル願望が強すぎたためその反対の状態、つまり地元での生活や就職をひどく嫌い、こんな田舎で終わりたくないと思っています。それが自分の母親に投影されてアンチモデルを作り上げてしまいました。

 信念が強い人は難関にぶつかった時にもあきらめずに立ち向かうことで不可能を可能にします。それが長所ですがその裏返しが短所となり、思い込みが強く他人の意見を聞こうとしない人とも言えます。ユイはテレビで自分より若い子達がアイドルになっているのを見て焦ります。そして18歳になる前に何としてでもデビューしなくてはいけない、という目標を一人で立ててしまいます。
 ユイが東京生育ちで原宿や渋谷に気軽に行けるのであれば、親が反対しない限りオーディションを受ける機会は頻繁にあったでしょう。しかし東京まで片道7時間という遠距離で、かつ未成年となればチャンスを掴む機会は非常に限られます。そこへスカウトマンの水口がやって来たわけですから、もう今すぐ東京に行くしかない、と思い込んでしまうのも無理はないことです。ユイにはクランボルツの「計画された偶発性」が目の前に現れたように感じたのです。

「あまちゃん」に学ぶキャリア&ライフ 【第9週:「おらの大失恋」】


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【あらまし1】

 種市先輩が好きなのはユイだと知り、ショックでアキは海に自転車ごと飛び込み学校を休みます。次の週末には北鉄の25周年記念イベントでユイとユニットを組んでパフォーマンスをすることが決まっていますが、アキは家に引きこもってしまいます。
 イベント中止になると北鉄は倒産する、と危機感を募らせる大人たち。種市は観光協会に呼び出され、アキを立ち直らせるためデートしろと詰め寄られます。ユイは一人でアキの家を訪れ、自分は種市先輩のことが好きかどうかはわからない、ただ負けず嫌いなのでアキの人気が自分より上がるのは悔しかった、と正直な思いを伝えます。アキも自分の本音をユイに明かして二人は仲直りします。

 開通記念イベントは大成功を収めアキとユイは岩手では知らない人のいないアイドル女子高生になります。海女クラブでは今年は観光ブームが必ず来ると期待しシーズンに向けて戦略会議を始めます。
 イベントが終わった後、ユイは「東京へ行ってアイドルになろうよ」と二人でのデビューをアキに持ち掛けます。ユイはスカウトマンの水口がお座敷列車に乗り込んで二人の歌と踊りを見ていたことに気づいていました。けれどもアキは

「元々オラ、芸能界だのアイドルだの興味ねえがら」
「おら、ユイちゃんとは違う。潜りたくて潜ったり、歌いたくて歌ったり、それしかでぎねえ。プロじゃねえから、自分のためにしか出来ねぇ。」
と言ってユイを失望させます。

【あらまし1の考察】

 今回はユイの兄、ヒロシのキャリア&ライフについて考察します。少し遡りますがヒロシは漁港の監視小屋のアルバイトを辞めた後は観光協会のホームページ管理者に就職します。次にユイとアキが地元のテレビに出演することになると二人のマネージャーを買って出ます。ヒロシは盛岡の大学を卒業後東京で就職しますがすぐ辞めて北三陸に戻っていました。
 現実のUターン就職の場合、親が自営業をしている人は自分で納得できさえすれば経済的人脈的な財産を親から受け継ぐ形で仕事に就けます。ヒロシの父は県議会議員の父ですから将来親の地盤を継いで政治家になれるかもしれません。しかしヒロシは父親との折り合いが悪く父親からは「情けないやつ」と見放されています。

 現在大学生は50万人ほどが毎年卒業しますが、昔と違って大卒の肩書はもはや大企業で働ける保証書にはなっていません。大卒生と新卒採用の需要と供給のバランスが崩れて、現在はこれほど多くの大卒を受け入れる労働市場はありません。いえ、あるにはありますが、多くの大卒者が期待するような有名企業への就職は一流大学でも限られた人にしか用意されていません。専門知識を真剣に学ぶ気もなく4年間を遊んで過ごしたい大学生と、そういう若い人を金儲けのターゲットにして名前さえ書けば入学させる大学の両者が作り出してきた残念な需給関係が最大の理由です。
 ヒロシはそんな最近の大卒生の象徴です。盛岡では就職せず東京に出た理由については不明ですが、大企業の集まる東京に行きたかったのか、盛岡ではやりたい仕事がなかったのでしょう。或いは東京は求人倍率が日本で一番高く仕事を見つけやすいので、東京ならどこでも良かったのかもしれません。

 就活のハウツー本や大学の就職支援センターでは必ず「少なくとも3年は辛いことがあっても辞めないで」と説いています。けれども実際には多くの人が短期間で辞めてしまいます。短期間で辞めると再就職で応募する時に「この人は我慢強くない」とネガティブに受け取られてしまいます。勿論その人なりのまっとうな理由はあるでしょう。辞める事情は色々あると思いますが、何故自分は会社を辞めるのか、それは他人にきちんと説明できるような理由なのかを、辞める前に自分で十分考えておくべきでしょう。ただ若い人であれば辞めた理由が元の会社の悪口を並べ立てるようなものでない限り、応募者の良いところを見ようとする会社も多いのであまり悲観的になる必要はありません。

 ヒロシが監視小屋のアルバイトをしていたのは短期間でした。簡単に仕事に就けて働いた分だけお金をもらえるアルバイトは、一時的・短期的な働き方だと一般的には見られています。アルバイトは年数が経ち仕事が上手にこなせるようになっても時給は容易には上がりません。経営者はアルバイトを一時的な労働力として考えており、辞めてもまた募集すればすぐに集まると思っています。ヒロシがアルバイトから観光協会に就職できたのは、観光協会にはPCに詳しい人がおらずヒロシにはWeb管理の知識があったからです。観光収入アップのためアキとユイを全国的に広報したいと言うニーズがあったからこそ、ヒロシの能力とのジョブマッチングが成立したのです。
 ヒロシは自分で意思表示をして二人のマネージャーとなります。自分がやってみたい仕事を社内で見つけたらとりあえず名乗りを上げる、という積極性は自分のキャリアを発展させる上でとても望ましい姿勢です。Web管理とマネージャーとの兼務で仕事の範囲はグッと広がりますから、そういう中で組織の中で力を認められれば昇給や昇進も期待できるでしょう。ドラマの筋書きにはありませんがユイとアキの人気が全国的になればヒロシの評価も当然高くなるはずです。ヒロシは正社員での就職に加え、大好きなアキのそばにいられてかつ他の男の接近をガードできるという一石三鳥をしとめました。これもドラマの筋書きにはないですが、アキがヒロシを見直すチャンスも将来あるかもしれません。

 社会的学習理論の観点ではこれまでにも触れたクランボルツの「計画された偶発性」がヒロシにも現れています。監視小屋のアルバイト中にアキを好きになり、海女になったアキの動画を撮り、それがネットで爆発的な人気を集め、次はアキのマネージャーと、ヒロシのアキに対する一貫した思いが自分のキャリアアップにつながりました。

【余談】
 このドラマではダブルワーク、トリプルワークの登場人物がたくさん出てきます。海女クラブの女性たちもスナックのアルバイト(美寿々)、売店でのまめぶ売り(安部)、ブティック経営(弥生)など副業をしています。弥生は実は民謡のお師匠さんでもありアキとユイに歌唱指導までしています。「あまちゃん」はストーリー展開に応じて実はこんな才能もあるのだ、と様々な仕事をやってのける登場人物の大活躍を楽しむのも魅力となっています。一貫して一つの仕事をしているのは琥珀掘りの勉さんくらいでしょう。

【名言】
 「おら、ユイちゃんとは違う。潜りたくて潜ったり、歌いたくて歌ったり、それしかでぎねえ。プロじゃねえから、自分のためにしか出来ねぇ。」

 御座敷列車のイベントでユイと二人のパフォーマンスが大成功した後でアキがユイに言った言葉です。「自分のために」はタイトル通りの「あまちゃん」的な発言です。良い意味で「あまちゃん」であることをアキは自覚しています。地元のイベントで少し騒がれただけではアキは舞い上がったりしません。皆から注目され、一時的に岩手県で知らない人のない女子高生になったことと、アイドルになることは全く別です。アキはユイや観光客達と一緒に楽しい時間を過ごせて良い思い出が作れた、それだけで十分だと感じています。アマチュアだから楽しめた、プロのアイドルならばやりたくなくても歌わなきゃいけない、楽しくなくても踊らなきゃいけない時がある。アマチュアは自分の楽しみのためにやるけれどプロは人のためにやる、そのポイントをアキはしっかりと押さえています。
プロフィール
ようこそいらっしゃいました。 キャリアカウンセラーのマニーです。 このサイトでは主に「働くこと」について色々な観点から考えたいと思います。ご意見お待ちしています。

マニー

Author:マニー
今西穂高
埼玉県在住

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