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【書評】 15. 岸見一郎・古賀史健「嫌われる勇気」ダイヤモンド社

15. 岸見一郎・古賀史健「嫌われる勇気」ダイヤモンド社
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 目次:第一夜(「トラウマは存在しない」他)・第二夜(「すべての悩みは対人関係の悩みである」他)・第三夜(「承認欲求を否定する」他)・第四夜(「勇気づけというアプローチ」他)・第五夜(「自己肯定でなく自己受容」他)
 著者:岸見一郎 哲学者 日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問 多くの青年カウンセリングを行っている。
古賀史健 フリーランスライター。20代の終わりにアドラー心理学と出会う。

 数年前からベストセラー本としてしばしば宣伝され、2016年にはNHKの番組「100分de名著」でも紹介されました。哲学者が青年と対話する形でアドラー心理学を講釈しています。会話形式なので読みやすく、キーポイントは太字で表示されています。アドラーは百年ほど前のオーストリアの心理学者です。なぜ今になってマスコミが紹介するのか、また「アドラー心理学」とはどのような心理学なのか興味を持ちました。本書は働く人が持つ人間関係の悩みについてもしばしば触れています。初読は私がキャリアカウンセラーになる三年前ですが今回はキャリアカウンセラーの観点で再読すると首をひねりたくなるような叙述もあることに気づきました。
 まず気がついたのは本書が心理学ではなく哲学の本だと言うこと。なんとなく本文中に「心理学」という言葉が良く使われるので惑わされてしまうのですが、アドラーの時代から百年を経て現代の心理学は実証データを積み重ねて科学的になっていることを考えるとアドラーの主張にはデータ的な裏付けが一切ありません。哲学は論理の積み重ねなのですが、その論理は全て言葉の定義がベースになっています。心理状態や観念を説明するのは言葉によるしかないのですが、言葉自身の持つ不完全性によって常に誤解や異論が生じます。哲学的な議論はまず常識を否定するような命題を設定して聴衆の関心を集め、順々にその正しさを主張してゆきます。例えば「トラウマは存在しない」のようなセンセーショナルな発言を行います。「嫌われる勇気」というタイトルもそのような印象を受けます。売るために人が驚くキャッチコピーをまず出すというマーケティング手法とアドラーの思想が手を結んでいるようにも思えます。

 心理学に興味を持つ人の多くは、人間関係に悩みを持つ人や自己嫌悪が強い人が多いように思えます。いじめや劣等感に悩む人は「嫌われる勇気」のような書名を見るとそこに救いがあるのではと考えるでしょう。実際アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と説くので心理学的な雰囲気もあります。仕事の中で失敗をして周りから叱責され、その仕事に向いていないと考えて悩むのは人間関係が大きな要因であることは間違いないでしょう。その解決法として「周りや相手を変えるのでなく自分自身が変わる」ことを提唱します。この点はキャリアカウンセリングでも類似の理論があります。アドラー心理学ではさらに問題から逃げたり先延ばしにしてはいけない、と教示します。この部分にはコーチングの手法が混じっています。先生が生徒に諭すようなこの部分はキャリアカウンセラーとしては抵抗を感じます。
 更に第三夜の章では自分の心に潜む承認欲求(他者から認められたい心理)を否定すべきだ、何故なら承認を求めるあまり人は他者の期待を満たそうとして、他人の人生を生きることになってしまうのだと述べています。この部分にも違和感があります。承認欲求はマズローの欲求段階説の一つで、自己実現の一つ下の段階ですが、他者が実利的な期待をしていてそれに対して活動をするような解釈は限定的だと感じます。本書では他者の期待や問題は自分とは関係がないはずであり、自分の課題と他者の課題を分離する必要がある、と説明しますがこの発想が常に正しいとは思えません。
 一方で仕事の本質は他者貢献で、「自分が誰かの役に立っていることを実感することで自分の存在を受け入れる(第五夜 p239)」と述べている部分はキャリアカウンセラーとして同意できます。キャリアカウンセリングでは「仕事」と「自分(相談者)」との関係を中心に置きますが、仕事が生活の手段であるだけでなく、社会との関わり方でもあることはともすると見落としがちです。
 長くなってしまいましたが、結論として本書は自己嫌悪や劣等感に悩む人が本のタイトルや目次を見て救われたいと思うでしょうが、ハウツー本ではない(哲学の本です)ので、答えは自分で考えて出さなくてはならないことに気がつくと落胆する人もおられるでしょう。なぜなら「勇気を持ちましょう」と書いてあってもどうすれば「勇気を持てるようになるのか」についての具体的な訓練法は書かれていないからです。
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12. 相談する 【就活おみくじ】

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 就活は孤独な戦いと言われます。会社の特徴を調べ、多くの候補からどこに応募するかを考え、見知らぬ面接官に囲まれる。友人が突然手強いライバルになるかも。自分の将来は自分で決めて一人で行動しなければ社会人とは言えない。でもなかなか就職が決まらない。自分がダメな人間に思えてくる・・・。 
 人と気軽に相談する習慣がない人ほど孤独を感じるでしょう。でも声に出して助けを求める勇気を出しましょう。人はあなたが思っているほど冷淡ではないはず。家族、親せきのおじさんおばさん、学校の先生、クラブの先輩などなど。自分より長く生きている人は皆同じ悩みを通過してきたはずです。
 業界について、職種について、仕事の大変さや楽しさなどを知っているのはやはり人生の先輩達です。本やネットで調べるのも良いけれど、お手本にしたい人を見つけて生の声を聞かせてもらう方がきっと心に残ります。複数の人の意見を聞くとよりはっきりとしてきます。キャリアカウンセラーにもどんどん相談してください。就活のプロですから。

11. 助走する 【就活おみくじ】

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 会社に入っていきなり仕事を始めるように言われたらどうしますか?質問しても教えてもらえない。ここは学校じゃない!自分で考えろ!などと言われることもあるでしょう。新卒は別として会社は即戦力を常に求めています。だから面接でこれまでの経験や能力について確認しようとします。経験者は入社後に立ち上がりの早さが求められます。そのためには、売り物のスキルをすぐに使える状態にしておきましょう。サッカーでリザーブの選手が走って体を温める、野球のリリーフがブルペンで投げ始める、それと同じことです。

【書評】14. 新津春子「世界一清潔な空港の清掃人」朝日新聞出版

14. 新津春子「世界一清潔な空港の清掃人」朝日新聞出版

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 目次:歩いてきた道・私の生きかた・仕事について・家族について
 著者:新津春子 中国残留孤児を親に持ち17歳で日本に永住帰国。高校に通いながら働き製造工などを経て羽田空港の清掃会社に入社。そこで清掃のプロとして努力を重ね全国ビルクリーニング技能競技会で優勝。NHKの番組「プロフェッショナル」で清掃のプロとして紹介された。


 NHKの番組「プロフェッショナル」の予告編を見て新津さんに興味を持ちました。番組は見逃してしまいましたが書籍が出たのでさっそく読みました。清掃している人は誰でも街で見かけているでしょう。告白すると私自身、清掃人に対して親しみや感謝の気持ちを抱くことはこれまでありませんでした。清掃は誰にでもできる簡単な仕事、とか老齢なって「もうこれ位しかない」という状況でやむを得ず選ぶ仕事、そのようなイメージを持っていました。だから清掃人になる人は皆うつむき加減に淡々と仕事をしてやりがいなど持っていないのではと考えていました。
 まず第一章の冒頭に書かれた言葉「私たちも人間なんですよ」が胸に突き刺さります。本書を読み新津さんがとても誇り高く清掃の仕事に就いていることを知り衝撃を受けました。そしてキャリアカウンセラーとして自分はまだまだ未熟だと思いました。仕事に貴賤はない、という古い言葉を改めて思い出し自戒しています。

 新津さんは「せっかくこの世界に生まれたのだから、生きているときにめいっぱい、いろんなことをしよう」(P39)と常に思っています。それならば、なにも汚れ仕事などしなくてももっと外聞のいい仕事で頑張ればいいじゃないか、と考える人もいるでしょう。けれども新津さんは「この仕事が好きで、自分で選んだ」(p82)と言い切ります。仕事中に先輩からいじわるをされたり、仕事を貰えなかったりしたこともあったそうですが、くじけませんでした。「自分で決めて、この仕事を覚えるために来ていると思っていたから、やめてしまったらなんのためにここにきたのか、そもそもの目標がわかなくなってしまいます」(p82)と言います。
 「自分で決める・選ぶ」、「目標を持つ」、「好きなことを仕事に選ぶ」はキャリアカウンセリングの中で相談者を支援する重要なポイントですが、新津さんはカウンセリングを受けることなしに自分で決定・行動ができる人です。

 新津さんは自分で決めた目標「清掃のプロになる」を実現するために必要な道を自分で探して見つけます。東京都立品川高等職業訓練校(現・城南職業能力開発センター)に半年間通いました。その間の収入不足は失業保険で補いました。働く意思のある人に用意された社会制度をしっかり利用した点でも素晴らしいと思います。世間は冷たくても困った人を助ける仕組みは公共が用意しているので、遠慮なく活用するのが賢い生き方です。「何かを教わることができるというのは、なんと幸せなことでしょうか」(p91)には新津さんの向上心が良く表れています。

 新津さんが研鑽の中で学び、自分の基本姿勢にしている言葉は「心をこめる」です。本書のあちこちに出てきます。仕事をするには能力や技量が必要ですが、それだけでなく「どんな気持ちでやるか」が重要だと強調しています。私も時々「心技体」をキャリアカウンセリングの中で使いますが同じ観点だと思います。もう一つ新津さんの言葉で心に残ったのは「人と比べるのではなく、私は自分と自分を比べます」(P54)です。以前ブログの中に「今日の己は昨日の己を超えたか」と書きましたが、新津さんはそれを実践している方です。他人と比べるとみじめさが残ってしまう、と新津さんはその理由を説明しています。


10. 辛い体験 【就活おみくじ】

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 仕事は自分一人の思うままにはなりません。人相手ならば相手との利害関係、協力関係が影響します。モノ相手でも品質の良し悪しや道具の慣れ不慣れなどにより結果に違いがでてくる。失敗すると周りから批判され、評価が下がり、ストレスが高まります。嫌なことばかり。だからなかったことにしたくなる。他者の責任にしたくなる。けれども失敗の中には学ぶことが多くあります。「失敗学」という研究分野もある程です。辛いことを「いい勉強になった」と肯定的に受入れて、そこから教訓を引き出す。仲間に注意すべき点を伝えて共有する。失敗しない新しい方法を考える。やることは一杯あるはずです。 
 就活の面接で思うようにいかなかった時は、落ち込んでばかりいないで、何が悪かったのか、今度はどうすればよいのか考えてみましょう。
プロフィール
ようこそいらっしゃいました。 キャリアカウンセラーのマニーです。 このサイトでは主に「働くこと」について色々な観点から考えたいと思います。ご意見お待ちしています。

マニー

Author:マニー
今西穂高
埼玉県在住

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