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【書評】17. 岡田尊司「回避性愛着障害 絆が希薄な人達」光文社新書

回避性愛着障害

 目次:新たな「種」の誕生!?・回避型愛着と養育要因・社会の脱愛着化と回避型・回避型の愛情と性生活・回避型の職業生活と人生・回避の克服・愛着を修復する
 著者:岡田尊司 1960年生まれ。精神科医、作家。京都大学医学部卒。「ストレスと適応障害」(幻冬舎新書)「働く人のための精神医学」(PHP新書)など著書多数。小説家としては小笠原慧のペンネームで「風の音がきこえませんか」(角川文庫)などの作品あり。

 本書の内容は普段新聞で耳にするいじめ・ニート・ひきこもり・オタクなどの社会現象と深く関係しています。タイトル中の「回避性」の意味は「親密な関係を避ける」、「責任や面倒を避ける」、「チャレンジを避ける」、「傷つくことを避ける」等で、社会との繋がりが細い人を指しています。精神科医が「△△障害」などと診断する方達の予備軍とも言える人々を「〇〇性パーソナリティ・タイプ」と定義し、回避性の他にも依存性、強迫性など8つに分類しています。

 新書でありながらとても内容の濃い本ですが学術書ではないので読みづらくはありません。多くの著名人を上げて彼らも実は回避性のタイプだったなど意外性に引かれて読み飽きません。例えば、哲学者キルケゴール、心理学者ユング、小説家J.K.ローリングや井上靖などの幼少期を考察します。キャリアカウンセラーとしては第五章「回避型の職業生活と人生」は関係が深く、特に若年層支援の方にお薦めです。

 回避性タイプは先進国になるほど顕著になること、情報技術の発達と関係の深いことなど普段疑いを持っていた現代社会の変化への解釈が「やはりそうだったのか」と納得できます。具体的には子供どうし、又は親との交流の時間がゲームやDVDに奪われて、一方的な情報の洪水に晒されていることが回避性タイプの増加の理由の一つだと述べています。
 また回避性タイプの特徴として「面倒くさがり」を挙げ、それを「回避型の経済学」と名付けています。無気力な人達は、リスクのある行動をとることで乏しいエネルギーがますます減ってしまうから何もしない、「現状維持が一番安全」(p158)だと経験的に学習したためだと述べています。回避型からの脱却のキーワードとして「安全基地」を著者は提唱しています。回避性の人が傷ついて逃げ込む場所、つまり周りの人が彼らを「共感的態度で受け入れる」ことがその人の自信を徐々に回復する支援だと述べます。それは心理学的な様々な手法とその効果を検証する中で著者が直観的に掴んだ信条ですが、共感的態度こそキャリアカウンセラーの第一条だったことを思い出させます。 

 そして続けて回避性愛着タイプからの脱却には本人自身が自分の人生から逃げない(p280)ことだと述べます。この点がなかなか難しいとカウンセリングの現場で感じる方は多いと思います。キャリアカウンセラーは精神科医と役割が異なるので、ともすれば指示的になったり、焦って相談者を追い込もうとしたりします。ではどうしたら良いか。正解はないので私達自身も試行錯誤で進むしかないと感じます。ただ、そのヒントになるものは第六章「回避の克服」に何点か述べられています。現実と向き合う、自分の言葉で語る、過去の解釈をポジティブに捉えなおす、今やるべきことに集中する、などです。第六章もとても参考になりました。私は初め図書館で借りて読みましたが、手元に置きたくなり購入しました。合計で3回読み返しました。人とのコミュニケーションに苦手意識を持っている方、いわば当事者にも自己理解のために役立つと感じます。
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