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【書評】20. 佐々涼子 「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」 早川書房

紙つなげ!

 目次:石巻工場壊滅・生き延びた者たち・リーダーの決断・8号を回せ・たすきをつなぐ・野球部の運命・居酒屋店主の証言・紙つなげ!・おお、石巻
 著書:佐々涼子 1968年生まれ。ノンフィクションライター。2012年「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。

 本書の表紙写真がとても印象的です。震災の約一年半後に全長100メートル以上ある巨大な製紙機械の前で撮影されたものです。工場の再稼働のために全力で働いてきた日本製紙の社員達がポーズを取っています。惹かれたのは社員達の表情です。小さくしか写っていませんが一人ひとりの顔は自信に満ち誇らしげです。でも笑顔ではない。それはこの人達が一年半の間、非常に厳しい生活の中で仕事を続けてきたからでしょう。。
 2011年以降、個人的に東日本の震災復興に関心を持ち宮城県・福島県・岩手県を何度か訪れてきました。今年は石巻市に行ったのがきっかけで本書を手に取りました。2年前には同じタイトルでTVドラマも作られています。
 人はいかに困難な状況に面しても仲間がいれば乗り越えられるのだという教えを本書から読み取ることができました。そして復活のためには明確な目標を持つことと強い帰属意識が必要だということも学べました

 物語は震災当日から始まりめちゃめちゃに破壊された工場への絶望感、人力による泥や瓦礫の片づけを経て一台目の再稼働、社会人野球部の存続問題、世界最大級のN6マシンの復活までが描かれています。約千三百人が働き一辺が一キロもある巨大な工場の周辺に住む一千世帯以上もの家族までもが3.11によって大きく人生を狂わされました。著者の佐々涼子さんの筆力は素晴らしく、読む人に感動を与えてくれます。彼女のインタビューを受けたたくさんの社員や家族達が登場します。内定して来月入社予定だった野球部の新人から企業トップの社長、工場長までそれぞれが当時の思いを正直に語っています。一番印象に残ったのは震災後半年で再稼働させた8号機の責任者、佐藤憲明さんの言葉です。初稼働させた日を振り返り、身内も住宅も大変な被害を受け二度と経験したくないと述べた後、ひとつだけ感謝していることがある、「それは、当たり前に紙を作ることが、こんなにうれしいものだったのかと教えてくれたことです」と結びます。

 今の職場で人間関係や顧客からの無理難題に苦しみ、「もうこんな仕事辞めたい」と思っている人は少なくないと思いますが、仕事がなくなる、生活の基盤を失うような経験をした人たちのことを思えば、「辞めます」と言う前にやるべきことは一杯あるはずです。本書を読むと人間の忍耐力やお互いを思いやる心がいかに困難な状況を変えていく力を持っているかが良く分かります。
 尚、本書には被災地の生々しい話が描かれています。知りたくないような事実や描写も多く含まれています。夜通し助けを求める暗闇からの叫び声、亡くなった人を工場で発見する、或いは押し込み強盗などの事件も出てきます。現実を見聞きするのが辛いからとこれまでニュースや新聞、TVの特番など見ないようにしてきた人には相当ショックを感じるでしょう。でもそれこそがノンフィクションなのです。
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ようこそいらっしゃいました。 キャリアカウンセラーのマニーです。 このサイトでは主に「働くこと」について色々な観点から考えたいと思います。ご意見お待ちしています。

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