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【書評】16. 佐藤真海「夢を跳ぶ パラリンピック・アスリートの挑戦」岩波ジュニア新書

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 目次:私はどうなってしまうの?・入院、そして手術・退院後・アテネパラリンピックへ・新たな挑戦が始まった!・サントリーという居場所・義足に血が通うまで・未来へかける橋・命という宝物・子どもたちから力をもらう・より高みを目指すために・北京へ
 著者:佐藤真海 1982年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学でチアリーダーとして活動中に骨肉腫を発症し右足の一部を失う。義足のアスリートとしてアテネ・北京・ロンドンパラリンピックに出場。2020年東京オリンピック・パラリンピック招致メンバーとしてIOC総会の最終プレゼンテーションでスピーチを行った。サントリー株式会社に勤務する傍らアスリートとしても活動。様々な講演を日本各地で行い、障害者スポーツの普及に努めている。

 「神様はその人に乗り越えられない試練は与えない」というお母さんからの言葉を心にとどめ、常に前向きな佐藤真海さん。ご存知の方も多いと思います。プロフィールをお読み頂いた通り、片足を失ったのは大学生活を思い切り楽しんでいた時でした。子供の頃から体を動かすことが好きで、勉強にも真剣に取り組み、早稲田大学に入学します。片足を失い、チアリーダーという華やかな青春の頂点からどん底に突き落とされた時はどのような思いだったのか。本書の中で手術直後は家で泣いてばかりいたと振返っています。けれども本書に載っているたくさんの写真、真美さんは微笑んでいます。一方競技中の写真では表情が一変し、気迫ある一流のアスリートそのものです。
 十か月の闘病生活の後、大学に戻ると既に仲間は就活を始めていました。自分は片足で松葉杖、抜けた髪を隠すかつら、生活に慣れるだけで精一杯。健康で元気な友人たちを見ているだけで辛くなり、会うのを避けるようになってしまう。でも「真海、がんばれ・・・」と自分に言い聞かせ、今の自分に必要なものを探しました。その中で見つけたのが東京都の障害者スポーツセンターでした。小学生の頃は水泳の選手育成コースにいた真海さんにとってスポーツはとても大切なものでした。センターのプールで多くの人が泳いでいるのを見て「ウズウズして」きた真海さんは、すぐに泳ぎ始めます。ぎこちないながらも「泳げる!」ことに嬉しくなり、センターに通い始めます。そして次は競技場を義足で走っているアスリートを見かけ「カッコイイ!」と心から思ったそうです。選んだ種目が走り幅跳びだったのは出会ったセンターの職員が経験者だったため。偶然の出会いでも迷わず掴むのは真海さんの生き方なのでしょう。
 
 本書の真海さんをキャリアカウンセラーの観点で見ると参考になることが多く含まれています。4Sトランジション・モデル(シュロスバーグ:キャリア発達論)を当てはめてみます。トランジションは日本語で「過渡期」、「転換期」です。4Sとは(Situation:状況、Self:自己、Support:支援、Strategy:戦略)です。骨肉腫で足を失い悲嘆に暮れてしまう(状況)。でも自分で自分を励まして必要な情報を探す(自己・行動)。障害者スポーツセンターに入会して施設を利用する(支援)。指導を受け、走り幅跳びのトレーニングを受ける(戦略)。このトランジションの中で行動しているうちに何かが見えてきます。真海さんの場合はパラリンピック・アスリートとして国際大会に出場したい、という目標でした。目標がはっきりすると人は強い力を発揮できます。それが北京・アテネ・ロンドン大会と連続出場にまで繋がりました。
 キャリア・アンカー(その人が最も大切にしているもの、土台)(シャイン:発達論)の観点で見てみましょう。真海さんの場合、特に「自律」、「社会貢献」、「挑戦」の3つが土台になっています。「自分で考え、行動する(自律)」は気仙沼から遠地の仙台育英学園に進学(恐らく親から離れて市内に居住)し、さらに上京して早稲田に入学したこと、また障害者スポーツセンターを自分で訪れたことなどから伺えます。「社会貢献」は部活動がチアリーディング(応援する、盛り上げる)であったこと、パラリンピック出場後に障害者スポーツの振興や震災復興支援のために講演活動をしていることが裏付けています。「挑戦」は特に真海さんの根源的なキャリア・アンカーで、次々に高い目標に向かって進んで行く姿勢はとても素晴らしいものです。その証拠に、本書では近況は知りえない(8年前に発行)のですが、2016年現在は結婚し、一児の母となりさらに競技種目をトライアスロンに変更して活躍しています。
 その他にも、上級のアスリートを見つけて自分の目標とする(モデリング)、会社の仕事とアスリートとのバランスを取るため解決策を考え提案する(課題解決アプローチ)などキャリアカウンセリング上多くの好事例が見出せます。
 最後になりますが、本書の中で真海さんが常に心掛けている、とても大切なことが述べられているので紹介します。  

「辛いときこそ笑顔で」

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ようこそいらっしゃいました。 キャリアカウンセラーのマニーです。 このサイトでは主に「働くこと」について色々な観点から考えたいと思います。ご意見お待ちしています。

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